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二回戦第一試合―――サンレッドと風見幽香の死闘。 それは、太陽の戦士の勝利で幕を閉じた。 興奮覚めやらぬ中、サンレッドは両手をゆっくりと下ろし、ようやく息をついたのだった。 『天体戦士サンレッド、一回戦に続いてまたしても大番狂わせをやってのけたぁ!幻想郷最強とも噂される風見幽香 を激闘の果てに捻じ伏せ、準々決勝への進出を決めました!まさに彼こそはドSを越えた超絶ドS――― 真・究極加虐生物サンレッドの誕生だッ―――!』 「フン!」 元ネタ通りに鼻を鳴らしてノリのいい所を見せるレッドさんである。 彼は倒れた幽香を見下ろし、口を開いた。 「どうだ、風見…最初に言った通り、俺の拳がおかしくなるまでボコってやったぜ…」 そう語るレッドの両手からは、ポタポタと血が零れ落ちている。 単に皮が破れているだけではない。折れた骨が、肉を突き破っていた。 「あと、もう少し…もう少しだけテメーがしぶとかったら、俺の負けだったよ」 「そう…惜しかったわ。けどね…その、ほんの少しの差こそが、全て…」 「…………」 「ああすればよかっただの、こうすれば勝ってただの、下らない言い訳などしない。負けたわ…サンレッド」 「なら…今すぐあいつを解放しろ。忘れたとは言わさねーぞ」 「解放…?ああ、ヴァンプ将軍の事ね」 何がおかしいのか、幽香はくすりと笑う。 「それについて、あなたに言わなければならない事があるの」 「何だと?」 「実はね、彼は…」 「あ、幽香さんはお疲れでしょうし、そこからは私がレッドさんに説明しときます」 ―――そう言いながら、入場門から現れたのは、囚われの身であった筈のヴァンプ様であった。 「レッドさん、二回戦突破おめでとうございます!いやー、素晴らしい闘いでした!」 彼はニコニコしながら、レッドをねぎらう。 レッドさんはというと、口をパクパクさせながら彼の顔を指差すばかりだ。 「お、おい…どういうこった…いや…正直、もう、可能性は一つしかねーって分かるんだけどよ…」 「その通りよ」 幽香が頷く。 「グルだったの、私とヴァンプ将軍」 「ええ。端的に言うとレッドさんを騙してました、すいません」 「端的に言わなくても分かるよバカ野郎!じゃあ何か!?磔になってたヴァンプは何なんだよ!?」 「ああ。あれは幽香さんが植物を変化させて作った人形なんですよ。よく出来てたでしょ?」 「…………おい。まさか」 レッドは全ての表情が消えた顔で、審判・四季映姫を見た。 果たして彼女は、したり顔で頷く。 「はい。私も事前に演出として説明されていました。でなければ、風見幽香を反則負けにしていますよ」 「おい…」 「なお、八雲紫もこの事は了承済みです」 「あいつもグルかぁぁぁぁぁっ!」 自分が完全にピエロであった事を知り、レッドは腹立たしいやら悔しいやら情けないやら、散々な気分である。 何故、勝利したというのに、こんなやるせない気持ちにならなければならないのか。 「…私も、最初は本気で拉致するつもりだったんだけどね。ヴァンプ将軍と話してると、あんまりなお人好しぶりに そんな気分も失せちゃって。ほんとに悪の将軍なのかしら、この人…」 「えーっ、それは酷いですよ、幽香さん。私はいずれこの幻想郷だって征服するつもりですから(笑)」 何気に壮大な野望を語るヴァンプ様に、会場の皆からも暖かい笑いが贈られた。 ヴァンプ様はテレテレした様子で手を振ってそれに応える。 「ね、こんな調子よ…何だか自分がどうしようもない極悪人に思えてきちゃって。予定を変更して、こういう演出に なったというわけ」 「ええ、そうなんですよレッドさん。いやあ、しかし感激です。私に危機が迫った事でレッドさんがあんなに怒って 下さるだなんて。普段は厳しい事を言ってても、やっぱりレッドさんは優しいヒーローだったんですね(ポッ)」 「…………ヴァンプ」 「はい?」 「言いたい事は山ほどあるけど、とりあえず、殴るぞ」 ガツンッ。 最後の力を振り絞り、砕けた拳でヴァンプ様をブン殴って――― レッドは遂に、精根尽きて倒れたのだった。 ―――担架で運ばれていくレッドと幽香。そしてコブが出来た頭を押さえつつそれに付き添うヴァンプ様。 それを見つめ、心から安堵している女がここに一人。 「もぉ~っ!紫ったら、仕込みならそうと早く言ってよ。幽々子、本気で心配しちゃったじゃない!」 白玉楼の主・西行寺幽々子である。 「ああ~、よかった!ほんっとうによかった!これでまたヴァンプさんの手料理が食べられるわ!」 「そんな事言ってると、妖夢が泣くわよ?白玉楼の台所を任されてるのは本来、あの子でしょうに」 「それがね、あの子ったら<ヴァンプさんが来てから楽でいいですねー>なんて平然と言ってるのよ。誰があんな風 に育てたのかしら!」 「鏡を見なさい。ほら」 「まあ、この世の者とも思えない美少女ね!」 「ぎゃはははははは!ヒィ~ひっひっひっひ!wwwwwwwwwwwww!」 「そこまで爆笑するこたないじゃない!」 「ごめんごめん。とにかくこれで太陽の戦士・サンレッドも八強入り。それも、星熊勇儀と風見幽香を倒して――― いいわ。とてもいいわね、彼は。予想以上にトーナメントを引っ掻き回して、混沌とさせてくれてるじゃないの」 「楽しそうねぇ、紫…ま、貴女はそういう子だから」 そうのたまう幽々子自身も、どこか楽しげに語る。 「目的も過程も結果も、貴女は重視しない…幻想郷が楽しければ、それでいい。それだけで、貴女は動いてる」 「今回に限っては、純粋に彼女の…アリス・イヴの遺志を汲んだつもりだったのだけどね。気付けば、この通りよ」 だけどね、と八雲紫は―――幻想郷の賢者は言う。 「きっと彼女も、このとてつもなく楽しい空気を味わいたかった事でしょう。この上なく楽しい時間を幻想郷の皆に 味わわせたかったのでしょう―――だからこれでいいの。だから、もっと楽しませて頂戴な」 「楽しくなかったわね」 レミリア・スカーレットは、そう嘯いて鼻を鳴らす。 「とんだ茶番劇だったわ。苛立ちさえも覚える」 「レミリアちゃんったら…」 しょうがないなあ、という顔のコタロウ。 「すごい闘いだったねー、ヴァンプさんが無事でよかったねーって、素直に言えばいいじゃない」 「如何にあなたの御言葉でも、奴を…サンレッドを褒めるような事だけは言いたくありません」 「ガンコだなあ…何でそんなにレッドさんを嫌うのさ」 「奴は、太陽の戦士です。そして、私は吸血鬼です」 太陽は我々にとって不朽の怨敵―――レミリアは、そう語る。 「そんな事ないよ」 コタロウは、微笑む。 「ぼくも兄者も、レッドさんと仲良しだもの。レミリアちゃんだって、きっと仲良くなれるよ」 「…………残念ながら、ありえません。サンレッドは私にとっては、永遠に敵でしかないでしょう」 それだけ言って、レミリアはコタロウに背を向けた。 「それでも―――少なくとも、あなたやジローとは仲良くしたいと思っていますわ」 「もっちろんだよ!ねえ、兄者」 「ええ。私のような若輩者でよろしいのなら」 天真爛漫に答えるコタロウと、礼儀正しく頷くジロー。 好対照な兄弟の姿に、レミリアは微笑んだ。そして歩き去りながら、言い残した。 「いずれ我が棲処―――紅魔館へと招待しましょう。幻想郷には私以外の吸血鬼はいませんから―――これでも、 寂しい思いをしておりまして。その折には是非、楽しい一時を」 その言葉には、遥か悠久を生きてきた古血(オールド・ブラッド)としての寂莫と孤独が込められていた。 ジローはレミリアの背中を見送りながら、彼女が生きてきたであろう長い、永い時を想う。 彼女の周囲には、友人と言える存在はそれなりにいるだろう。 誰かと一緒にいて、心安らぐ瞬間もあるかもしれない。 それでも―――レミリア・スカーレットは、孤独だ。 一人ぼっちで―――独りぼっちだ。 先の言葉は、それを否も応もなく痛感させるものだった。 と―――魔理沙が、こちらを怪訝な様子で見つめているのに気付いた。正確には、コタロウを、だ。 コタロウもその視線に気づき、きょとんとして見つめ返した。 「魔理沙ちゃん、どうかした?」 「いや…お前さあ。ただのバカなガキかと思ってたけど、何者?」 「え、何者って?」 「だってさぁ、あのワガママ娘があんなに謙(へりくだ)って敬語まで使っちゃってるんだぜ?気になるだろ」 「―――バカです」 ジローが、ややぶっきらぼうに答えた。 「こやつは、単なるバカです」 「兄者ったら、ひどーい!」 「いや、単なるバカです」 抗議を無視して、繰り返す。その態度に、魔理沙もそれ以上はこの話題を追及してこなかった。 はっきり言って性格の悪い彼女ではあるが、軽々しく立ち入ってはならない領域なのだと察したのだろう。 「…気になるといえば、もう一つ気になるんだが」 魔理沙はそう言って、話を変えた。 「あいつ、自分以外に吸血鬼がいないとか言ってたけど―――確か、妹がいたはずだぜ?なあ、パチュリー」 「ええ。レミィに輪をかけて問題児の妹―――フランドール・スカーレットがね…」 「何ですって…?それは、初耳だ」 なら、何故―――あのような事を? 「気にしない方がいいんじゃないですか?ああいうタイプは平然と、意味もなく、嘘を吐くものですから」 妖夢はそう言ったが、ジローには納得できない。 少なくとも―――最後にレミリアが見せたあの背中は。 痛々しいほど孤独に塗れたあの姿は、嘘ではなかった。 勿論、たかだか百年しか生きていない自分が、その五倍を生きた遥か年長の吸血鬼の心情など、完全に分かる はずもないのだが。 「それでも…彼女が嘘を言ったとは、思えない」 「…考えても仕方ないでしょう。もっと考えるべき事は、あるはずです」 妖夢はどこか物憂げだ。彼女なりに、思う所があるのかもしれない。 「例えば、東京レイヴンズは、いつアニメになるんでしょうか、とか」 「そんな事を物憂げに考えていたのですか…」 「そんな事とはなんですか。ジローさんの後輩でしょうが」 「それはそうですが、彼等はまだ三巻が出たばかりなんです。気が早いですよ」 「いや、実際に相当期待されてると思うんですよ。シリーズ開始とほぼ同時にコミカライズしたり」 「ふむ…確かに、漫画版も好評のようですしね」 「漫画版第一巻の帯の文句は、正直コアな層を狙い過ぎだと思いますが」 「公式で残念幼なじみ呼ばわりですからね…夏目さん」 「そっち系の新規開拓を相当意識してますよね。狐耳と尻尾の美幼女を書くとは流石に思ってませんでした」 「世の風潮というものでしょうか」 「まあ私が一番グっときたのは京子のパンチラですが」 「何気にパンツネタが好きですね、貴女…」 「正直、パンツとBLとファッションセンターしまむら以外の話はしたくありません」 「もっと他の世界にも目を向けなさい!」 「そんな事言われても困りますよ!」 「逆ギレされたっ!?というか貴女、しまむらの話なんて一度もしたことないでしょう!」 「何を仰る、ジローさん。妖夢といえばしまむら、しまむらといえば妖夢じゃあないですか。2011年度のしまむらの マスコットキャラクターとして、この魂魄妖夢が選ばれた平行世界もきっとあるはず」 「この世界では違うという自覚はあるんですね」 「大のしまむらファンだというのは違いありません。今も服の下にヒートテックを着てるくらいですよ?」 「それはユニクロだーっ!」 「閑話休題(それはともかく)。しかし、あざの先生は三巻からという格言があるものの、今回はイマイチだった気も しますね…面白いのは間違いないんですが、期待しすぎたというか」 「それは辛辣な。まだまだ土台作りの段階と考えるべきでしょう」 「とはいえ、専門用語ばかり羅列されても、正直ついていけないと感じる部分が多いのですよ」 「ふむ。確かに…」 「そこへいくと<力場思念(ハイド・ハンド)>や<視経侵攻(アイ・レイド)>は専門用語でありつつどんな能力なのか 簡単な説明だけで分かる好例でしたね。如何にも吸血鬼的な能力ですし」 「恐縮です」 「あ、いや。ジローさんを褒めたわけじゃないですから。その辺勘違いされても困るというか」 「ツンデレじゃない娘に勘違いしないでと言われると、辛いですね…」 「専門用語の話は置いといて、三巻がショボいと感じた一番の要因は<最凶の十二神将>という仰々しい触れ込み で登場した鏡さんが単なるチンピラだったせいだと思うんですが、ジローさんとしては如何でしょうか?」 「弱い者いじめ大好きで、強い者には弱かったりと、普通にヤな奴ですしね…個人的には、ああいうタイプもいた方 が話の幅が広がるとは思いますが」 「ま、扱い切れずにハンパなキャラのままでリタイアなんて醜態だけは晒さないでほしいものです」 「…妖夢さん。さっきから、やたら厳しい意見ばかりじゃありませんか?」 「ファンだからこそ見る目が厳しくなるのですよ…話をアニメ化の方向に戻すと、やはり気になるのは声優ですね」 「なるほど。それは大事な要素です。かくいう私もアニメでは声優の熱演に随分助けられましたから」 「まあ、ここで声優妄想するというエロ漫画描いてた頃の的良みらんみたいな事はやめるとして」 「ここまで好き勝手言っておきながら、最後の一線は守るんですね」 「あれは正直、相当イタイ行為だったと本人も反省してるだろうし、寛大な精神で赦してやりましょうや」 「何という上から目線…」 「実を言うと一般誌で描き始めてからは、全然あの人の漫画見てないんですが」 「貴女、最低です!」 「とにかく、東京レイヴンズがアニメ化される日が楽しみですね。OPがどんな電波ソングになるのか、考えただけ でワクワクしてきます。きっとパンツが空を飛びますよ」 「そういうノリの作品でもないはずですが」 「春虎くんや夏目さんがEDでデフォルメされてどんなダンスを踊るのかを想像しただけで萌えてきちゃいます」 「それは一昔前のセンスのような」 「コミケが春虎×冬児の強気受けな薄い本で溢れ返る日も近いでしょう」 「私はむしろ鏡×冬児の鬼畜攻めだと思うわ!」 「パチュリーさんが鼻息荒くしてこの話題に喰い付いてきたっ!?」 しかも、コアな分野で。 「これでも読書家だからね。実はさっきからどのタイミングで話に入ったものか見計らってたのよ」 「このタイミングで、ですか」 「じゃあ訊くけど、他にどのタイミングがあったというの?」 「…腐ってやがる…遅すぎたんだ…」 色んな事が。 「ほほぉ…とすると、パチュリーさんとしては純愛系より無理矢理迫られた方がいいと」 「モノにもよるわ」 「カズキの相手は誰だと思いますか?」 「パピヨンよりはブラボーね」 「一人前の戦士になるための特訓と称してアレコレですね、分かります」 スター○ストさんが怒りだしそうな会話だった。 「逆に尋ねるけど、一護の相手は?」 「浦原さん…と見せて更木隊長でいきましょうか!」 「いいわね、それ!」 ゴチン、と拳を打ちつけ合う二人。 腐った系統の話題で意気投合し、盛り上がり始めた妖夢とパチュリー。 ジローは流石に、この話に加わる気にはなれなかった(なってたら色々な意味でヤバい)。 ふと、周りを見ると。 コタロウと魔理沙、アリスは、ドン引きした目でこちらを見つめていた。 ジョジョ的に言うと<養豚場へ運ばれる豚を見るような>そんな目だ。 サンホラ的に言うと<この人達は何を喚いているんだろう…気持ち悪い…>そんな目だ。 「兄者達が何を言ってるのか、全然わかんないよ…」 「数十行かけて、こんなとこで力説することでもないよなぁ…」 「キモい(ばっさり)」 「…………」 何故、自分がこのような視線に晒されなくてはならないのか。 自分はただ日々の些細な出来事に小さな喜びと幸福を見出し、慎ましく生きているというのに。 ジローは石像のように黙りこくり、静かに、この話題が時と共に風化するのを待つ他ないのだった…。
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律「なあ、澪」澪「ん?どうした?」 澪「台風の日に」 唯「わたしがあなたを。あなたが私を」 梓「大雪の昼に」 律「置いてきた想い」 このページにあるSSの感想は下のコメント欄にてお願いします。 ぷは~ですかw 今度やってみようかな(笑) たまに牛乳あるし。 面白かったです。 -- りっつん(仮) (2011-11-16 23 00 09) 澪「台風の日に」 読みました~、台風の時にわざわざ来るのが すごくりっちゃんらしいですね 最後は一緒に就寝ですか! それはそれでいいと思いま~す! 次もみるぞ~! -- starlight#u 唯「わたしがあなたを。あなたが私を」 読みました! 唯が消えちゃってあずにゃんが悲しんで それでも最後にはちゃんと戻ってくる! 最初でちょっと泣きかけてしまったのは内緒の話 やっぱりけいおん!は感動を呼ぶアニメです! それだけこのSSの作者がうまいという事ですか こういう感動的な作品が書ける人って ちょっと憧れてたりします! -- darkstarlighter (2011-11-26 22 17 02) 新SS見させてもらいましたよ! まさかの唯が帰ってくるのは予想してなかったです・・・。 こういう系は弱いなぁ自分 -- さとし (2011-11-30 22 32 07) 名前 コメント
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『さあ、会場の皆さん!二回戦の全試合が終了し、これにて本日の闘いが全て終了しました!』 未だ興奮のざわめきが収まらぬ中、それに負けぬ勢いで響く実況。 『あんな試合、こんな試合、色々ありましたね!…え?ほとんど見た覚えがない?それは気のCeuiよ。とにかく本日 の全24試合を終え、遂に準々決勝に8名が駒を進めました!』 「ふむ…確かにここまで長い道のりでしたね」 実況に同意し、妖夢も感慨深げに頷く。 「ほんの数時間の事でありながら、まるで半年ぐらいかかったような…」 全く妖夢は、何を言っているのか。 ほんの数時間の間の出来事を書くのに半年以上もかかるだなんて、そんなバカな話があるわけない。 ないったらないのだ。 「いやいや、構いませんよ。何せ私は<未来放浪ガルディーン>の続きを今なお待ってるくらい気の長い女ですから。 どうぞ、気楽にやってください」 「…あの、誰と話してるんですか?」 ちょっと薄気味悪げに、ヴァンプ様が尋ねる。 「天におわす、この世界を産み出せしオタク野郎とです」 「はあ…いるんですか、そんな人が」 「おや、信じておられない?まあ、行数を稼ぐために無意味な楽屋ネタを入れるような仕事ぶりでは、奴を信じろと いう方が無理な話かもしれませんが」 ふう、っと溜息を吐く。 「ま、その辺は彼も反省してるし、大目に見てあげましょう。きっとこれからはギャグなど一切入る余地のない本格 シリアスバトルストーリーになっていくはずですから」 「いつもいつも、そんな事ばかり言って…何を考えて生きてるんですか、貴女」 「フッ…知れたこと」 呆れて物も言えない、といった風情のジローに対し、妖夢はBに近いCカップといった、控えめながらも<女性> としての存在を主張する二つの柔らかくて男なら誰でも大好きな俗に言う所のおっぱいを反り返らせて答えた。 「私は何時如何なる時も、読者の皆様を萌えさせるためだけに生きております。↑の一文もそのためです」 「妖夢さんに萌えてる方は相当の少数派だと見ますが」 「何を仰る。バキスレの萌えキャラといえばこの妖夢か小札か、でなくばふら~りさんではありませんか」 「彼女らと比べたら貴女のコールド負けじゃないですか。怖れながら言わせていただきますが、当SSに寄せられた 感想で、貴女を好きだという意見をほとんど見た事がない。ヴァンプ将軍の方がまだ勝負になります」 「え、そんな事ないですよ。私なんてただのオジサンですよ、ははは」 頬を真っ赤にしてテレテレなヴァンプ様である。 萌える。 そんな彼をライバル意識むき出しの目で睨み、妖夢が反論する。 「いいえ、私の隠れファンも結構いるはずですよ?私が何年、薄い本業界で活躍してると思ってますか。萌えさせる ためなら、脱ぐ事も厭わぬプロ根性!幽々子様との百合百合でイヤーンなカラミだってこなしますとも!」 「そんな必死だから皆さん、貴女に萌えてくれないんだと思います」 「ぬう…難しいものです。そもそも<萌え>って何なんでしょうか…」 哲学的だった。 ジローは答えられない。つーか、考えたくないという顔だった。 「ここは魔法少女属性をつけてみましょうか。実は最近スカウトを受けたんですよ。白くて可愛いマスコットと契約 して魔法少女になれば願いが一つ叶うそうですよ。タイトルも<魔法少女ようむ☆マギカ>にしてもらえると」 「止めはしませんが嫌な予感がするので、断っておきなさい」 「では何か口癖を考えてみましょうか。<うぐぅ>だとか<あうー>はどうでしょう。或いは<はちみつくまさん> に<~~だおー>とか言ってみるのもいいかもしれませんね。これは一時代築けますよ」 「その時代は、かなり昔に終わっていますよ…」 「そんなこと言う人、嫌いです!」 ―――と、綺麗に落ちた所で。 『さあ。では登場してもらいましょう。見事ベスト8に名を連ねた人間・妖怪・吸血鬼・鬼・風神・大悪霊・魔界神 ―――そしてヒーロー!皆さん、盛大な拍手をどうぞ!」 まず現れたのは、紅白を基調とした巫女服に身を包んだ少女。 <人間>博麗霊夢。 続いて、二本の巨大な角を備えた小柄な童女。 <鬼>伊吹萃香。 白皙の肌と血のように紅い瞳。 <吸血鬼>レミリア・スカーレット。 巨大な注連縄を背負った、蒼い髪の少女。 <風神>八坂神奈子。 風に揺れる白銀の髪と、漆黒の六枚翼。 <魔界神>神綺。 大きなトンガリ帽子に青いローブ、悪霊だから足はない。 <大悪霊>魅魔。 相変わらず、胡散臭い笑顔を浮かべた少女。 <妖怪>八雲紫。 最後に溝ノ口からやってきた、真っ赤なチンピラ。 <ヒーロー>天体戦士サンレッド。 『―――以上8名!いずれも劣らぬ猛者ばかりです!それでは、御一人ずつにこれからの闘いへの意気込みを語って いただきましょう!インタビュアーは不肖ながら私、射命丸文が務めさせていただきます!』 文の背中から黒い羽が広がり、同時に実況席からその姿が消える。 次の瞬間には、既に彼女は8人の眼前に立っていた。 その速度に、レッドは少々ながら驚いた。 「…そんなスピードがあんなら、出場してりゃよかったんじゃねーか?」 「いやいや、レッドさん。私はこれで結構長生きでして、この歳になると自分で参加するより、誰かが盛り上がって いるのを見物することに楽しみを見出すようになるので御座います」 「そういうもんか」 「そういうもんです。いやーしかしレッドさん。こうして並ぶとあなただけ浮いてますねー、色んな意味で。正直に 言わせてもらうと、もうギャグの領域ですよ(笑)」 「ほっとけ!」 「おお、怖い怖い…ではまずは博麗の巫女・博麗霊夢さん、どうぞ!」 「そうね…私が言いたいのは、一つだけ」 霊夢は、巫女に相応しい神秘的な雰囲気を醸し出し、厳かに言った。 「観客、多いわね」 「ええ、幻想郷中から集まってますから」 「そう…多いはずよね…でも、何で…」 ビキッ。突如、その額に、青筋が浮かんだ。 「―――何だってこんなトコには集まるくせして、ウチの神社には集まらないのよ!ええっ!?舐めてんのあんたら ねえ、舐めてんのぉ!?」 「ちょ、ちょっと、霊夢さん…」 「あんたらのうち十人に一人でもウチに来て、一人十円でも賽銭箱に入れてくれれば、私だって…私だって貧乏巫女 なんて言われずに…すむのに…う、うっ…うううっ…!」 とうとう泣き出した。文は声をかけるべきかどうか迷い。 「…さあ、二人目にいきましょう!」 結局見なかった事にした。英断である。 「大悪霊・魅魔様!ここ数年、御姿が見えなかった貴女ですが、何処で何をしていたのか気になる所ですねー」 「ふふ。色々やってたのさ、あたしも…」 大人びた(年増などと言ってはいけない)美貌に影を落とし、彼女は言う。 「ほう、例えば?」 「搾乳モノのビデオに主演女優として」 「はいー!個人的には詳しく訊きたいけどお子様も見ているのでアウトー!では魅魔様、一言どうぞ!」 「そうだね…それじゃあ」 すっと顔を上げ、観客席の一点を見つめる。 その視線の先には、霧雨魔理沙の姿があった。 魅魔は顔を綻ばせて、大声を張り上げる。 「魔理沙ぁ~~~っ!見ててよ、お師匠様、頑張るからねぇ~~~っ!」 「師匠…?」 レッドは眉を持ち上げた―――マスクなのにどうやって、などと訊いてはいけない。 「あんた、あの白黒の…」 「ああ。あいつに魔法を教えたのは、何を隠そうこのあたしさ!」 「はあー…」 魔理沙はというと、必死に顔を伏せていた。 恥ずかしい師匠を見られて恥ずかしいという、見たままの有り様だ。 レッドさんは自分に置き換えて考えてみた。 ―――大観衆の中、インタビューを受けるヴァンプ様が自分に向けて大きく手を振る。 「レッドさーーーん!私、頑張りますから、応援してくださいねーーー!」 (うわっ!こりゃ恥ずかしい!そしてウゼぇ!) 考えただけでヴァンプ様を殴りたくなってくる。 これが終わったら一発こづいてやろうと決心するのだった。 「え、えー…では次に魔界神・神綺様!魔界統治で忙しい中、よくぞ来て下さいました!」 「あら?そんなに忙しくないわよぉ」 左側で纏めたサイドテールの髪を靡かせながら、年若い少女のようにコロコロ笑う。 「難しい事は大概夢子ちゃんがやってくれるしぃ。あ、夢子ちゃんは私のメイドさんでとっても可愛い子でぇ」 「あ、あはは…そのお話も興味深いのですが、長くなりそうなので、一言でお願いします」 「え~…一言、というと…そうねぇ…」 すっと顔を上げ、観客席の一点を見つめる。 その視線の先には、アリス・マーガトロイドの姿があった。 神綺は顔を綻ばせて、大声を張り上げる。 「アリスちゃーーんっ!見ててよ、ママ、頑張るからねぇ~~~っ!」 「ママ…?」 レッドは眉を持ち上げた―――マスクなのにどうやって、などと(略 「あんた、あの人形女の…」 「うん。あの子を産んだのは私よぉー」 「はあー…」 アリスはというと、必死に顔を伏せていた。 恥ずかしい母親を見られて恥ずかしいという、見たままの有り様だ。 レッドさんは自分に置き換えて考えてみた。 ―――大観衆の中、インタビューを受けるヴァンプ様が自分に向けて大きく手を振る。 「レッドさーーーん!私、頑張りますから、応援してくださいねーーー!」 (うわっ!こりゃ恥ずかしい!そして超ウゼぇ!) 考えただけでヴァンプ様を殴りたくなってくる。 これが終わったらさっきのも合わせて二発こづいてやろうと決心するのだった。 「では…次…」 あまりに身も蓋もないインタビューの連続にテンションが下がりつつ、文はやる気を奮い起こす。 「守矢神社の祭神が一柱・八坂加奈子様!外側の世界から此処に来て以来、殆どの異変が間接的にあんたらのせい で引き起こされてると言っても過言じゃあないお騒がせ一家の家長!」 「酷い言われようだね、全く」 そう言いつつ、否定はしない。 「とにかく、ここまで来たからには目指すは優勝だけさ。ねえ、早苗、諏訪子!」 それに応えてか、観客席から黄色い声が上がる。 「ファイトです、八坂様!」 「神奈子ちゃーん、あたし達の分まで頑張ってぇー!」 長い髪の美少女と、ヘンテコな帽子を被った美幼女である。 この二人が<早苗>と<諏訪子>らしい。 「応よ、私に任せるがいい!優勝し、守矢神社の名声をこの幻想郷に響かせるのさ!その余勢を駆り、この幻想郷を、 守矢神社を頂点とする一大宗教国家に生まれ変わらせる…!ふふ―――そして我々はそれに乗じて可愛いマスコット <モリヤくん>を発売。私達三人のブロマイドはリビドーの溜まった青少年諸君を中心にバカ売れ、その勢いに任せて 現世へ舞い戻り、無能な政治家共から政権を奪取し、鬼畜米英へと宣戦布告し、我々が世界を支配するのだ!」 「おいおいおい…」 レッドさんは呆れつつ、文に耳打ちする。 「なんかすげー野望がこんなトコで明らかにされちまったぞ…いいのか、これ」 「うーん…これはもう、誰かがあのアホ…もとい、邪神を倒してくれるのを祈るばかりです」 答えつつ、文は非常にうんざりしていた。 (こ、こいつらは…個人的な事以外、まるで話す気ないじゃないですか…何でだよ…何で幻想郷はこんな奴らばかり なんだよ…こんなんじゃ私、実況をやりたくなくなっちまうよ…) と、文が某異星人のように心中で愚痴っていると。 「貸しなさい」 レミリア・スカーレットが、マイクを奪うようにして引っ掴む。 「―――さて。もう何度も説明しているけれど、この大会の優勝者には、賢者イヴが遺した秘宝が贈られる」 その声の、なんと威厳に満ちた事か。 幼い姿に似つかわしくない厳粛な面持ちに、誰もが魅入る。 「賢者イヴ。この幻想郷において彼女を知る者は、残念ながらそう多くはないでしょう。されど、私は知っている。 彼女が如何に偉大か、如何に素晴らしい方であったか」 そして。 「その賢者の遺物ならば…手にすべきは、最も強く、高貴な存在であるべき」 月夜に向けて、その手を大きく突き上げた。 「宣言する。彼女の遺産はこのレミリア・スカーレットが必ずや、手にすると―――!」 「お、おお…!」 やっとこまともなコメントが出てきて、文はちょっと嬉し泣きしそうだった。 (パチパチパチ) 心中では、盛大に拍手してたりした。 (へー…あながち、ただのクソガキでもなかったか…) その様子には、彼女と折り合いの悪いレッドでさえも感心させられるものがあった。 言葉の裏から滲み出すような強い決意を、感じずにはいられない。 文はマイクを受け取って、レッドに突き付けた。 「素晴らしい御言葉、ありがとうございました!では次、レッドさん行ってみましょう!」 「え、俺?」 「はい。皆さん、あなたには注目してますよ?新顔ながら星熊勇儀・風見幽香という強豪妖怪二人を倒して、堂々の 準々決勝進出ですからね。いいコメント、期待してますよ!」 「あー…」 マイクを貰い、何を言おうか迷いつつ。 「えっと。川崎でヒーローやってるサンレッドです。年は27です…あーいや、年は別にいいけど。何つーか、アレ。 俺には一人、吸血鬼のダチがいまして」 とりあえず、正直な気持ちを言う事にした。 「そいつは百年以上生きてるくせにはっきり言ってどーしよーもない奴でして。女の家に弟と一緒に転がり込んで、 その子に生活基盤全部を丸投げして、弟に対しては躾を通り越して虐待も飛び越えて日常的に拷問としか思えねー 暴力を振るうような奴で―――あ、この弟ってのもとんでもねーバカなんで、ブン殴りたくなる気持ちも正直分かると いえば分かるんですが」 観客席から凄いメンチをきられてるのが分かったが、ポリポリと頭をかきながら続ける。 「まあでも、付き合ってみると割といい奴だし…そんで、その賢者イヴってのとも、色々あったらしくて、そんで… あー、イチイチ説明すんのはもうメンドくせえ!いいか、ジロー!何度も言うようだけどなあ!」 ビシッと。 観客席のジローに向けて、指を突き付けた。 「俺は相手が誰だろうとブチのめして、優勝して、賞品を持って帰ってやるから―――川崎に戻ったら、豪勢なメシ でも食わせろよ!」 「…レッド」 ジローは相好を崩し、答える。 「何でも、好きなものを奢りましょう!」 そんな彼に、最愛の弟であるコタロウは囁く。 「兄者…今月は遅刻しすぎの罰でミミちゃんからお小遣い減らされてるのに、そんなこと言って大丈夫?」 「…交際費ということで、どうにか誤魔化しましょう」 汚い大人の社会を学ぶコタロウだった。 「―――いいね、いいね。友情というのは、とてもいい」 そこに割り込むように、幼い少女の声。 「友達は大事だ。とても大事だ。友達が隣りにいてくれるだけで、酒も旨いしメシも進む」 レッドが手にしていたマイクはいつの間にやら小さな手で奪い取られていた。 「だけど…その友情のためにわざと負ける…なんてことはしないよ。あんたもそんなの望まないだろうしね」 「テメエは…」 「酔いどれ幼女―――伊吹萃香ちゃんさ」 星熊勇儀と同じく、鬼族最強の四天王の一人――― 伊吹萃香。 「トーナメント表でいえば、次のあんたの対戦相手だね」 「…星熊の、敵討ちってとこか?」 「いやいや、そんなつもりはないね。あんたも勇儀も全力で闘り合った結果さ。そんなみみっちい事言ってたら、 私こそ勇儀に殴られちまうよ。私はただ、鬼の闘争本能のままに、あんたと闘うだけさね―――」 萃香は朗らかに―――それでいて、獰猛にも見える顔で笑う。 見た目そのままの少女のように。 見た目に似つかわしくない、猛獣のように。 「さ、私の言いたい事は以上だ。最後は…ほれ、紫。ビっと決めな」 マイクを無造作に放り投げる。それは明後日の方向に飛んでいったかと思えば、次の瞬間にはどういうわけか 八雲紫の掌に納まっていた。 「ま、特に言う事もないんだけど…そんなに皆、肩肘張らずにやりなさいな」 「楽しければいいの。面白ければいいの」 「混沌ならばそれでいい。混乱ならばそれもよし」 「踊るもよし、唄うもよし。それを見て阿呆と笑うのも、それで楽しいならよし」 「勝ち負けなんて関係なく、最後の最後、この祭りを一番楽しめた奴が勝ちよ」 「はい、私のインタビューは終わりよ。どうぞ」 にこやかに、それでいて胡散臭い笑顔で、紫は文にマイクを渡す。 「相変わらず、何が言いたいのか分かるような分からないような…結局、煙に巻かれたような」 「気にしたら負けよ。何も楽しめなくなるからね」 「はー…」 あんた絶対、自分でも何言ってんのか実は分かってねーだろ。 喉まで出かかった毒舌を引っ込め、声を張り上げる。 「では、これにて本日の全日程は終了です!準々決勝は五日後―――その組み合わせは!」 『準々決勝・第一試合―――サンレッドVS伊吹萃香!』 『準々決勝・第二試合―――レミリア・スカーレットVS博麗霊夢!』 『準々決勝・第三試合―――八坂神奈子VS神綺!』 『準々決勝・第四試合―――八雲紫VS魅魔!』 「―――それでは今日はさようなら!五日後の熱闘・死闘・大激闘をお楽しみに!―――え?ハードルを上げる な?いえいえそんな。上げに上げたハードルならば、その下をくぐればいいだけですよね☆」 「解決策になってねー!」 「ははははは。それでは皆様、また会いましょう!」 ―――五日後。 天体戦士サンレッドには、更なる激しい闘いが待ち受けている。 「クックック…しかし、その前に、やらねばならぬ事がある…」 「ヴァ…ヴァンプ、さん…?」 「ヴァンプ将軍…何を!」 「クックックックック…!」 ―――悪の将軍ヴァンプは、不気味な笑いを浮かべる―――! そのド迫力に、隣にいたコタロウは思わず唾を飲み込み、ジローは刀に手をかける。 「レッドさんの祝勝会ですよ、ねっ!私、腕によりをかけてゴチソウ作っちゃいますから!」 「わーい、ヴァンプさんのゴチソウー!ねえねえ、ケーキは!?ケーキも作る!?」 「うふふ、もっちろんだよー、コタロウくん」 「わーい!きっとゆゆちゃんも喜ぶよ。食いしん坊バンザーイ!」 「ははは、じゃあ幽々子さんのためにもたくさんゴチソウ作らないとね」 「…………」 ジローは、そっと刀から手を放すのだった。 さあ。 次回はバトルもお休みして、楽しい祝勝会! しかし―――それがまさか、あのような惨劇になろうとは――― 正直な所、皆が薄々感づいていたのだった。
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ここでは管理人が書いたSSを置いています。 TRPG アリアンロッド・サガ・リプレイ 新しき国の女王 無印1巻直後のアル×ピアニィのSSです。 幸せを願う 無印1巻~2巻の間のアル×ピアニィのSSです。オリジナルキャラクター有。 お届け物 無印2巻~3巻の間のアル×ピアニィのSSです。ミスティックガープネタ。 側にいる理由 無印3巻直後のアル×ピアニィのSSです。ナーシアとベネットも登場しています。 剣を取った理由 無印4巻~5巻の間のアル、ナーシア、アキナのお話。3人がそれぞれ剣を取った時の想い。 願いをこめて 無印5巻~6巻の間のエピソード。5巻でマントを着てなかったアルさんが6巻で着ているのを見て、その理由を考えてみましたw オリジナルキャラクター有。 アリアンロッド・サガ・リプレイ・ブレイク 絆はここに ブレイク5巻終了直後辺りのアガルタ姉弟の日常の一幕&ゴーダ伯のお話。私には珍しく(?)ギャグっぽいですw アリアンロッド・サガ・リプレイ・デスマーチ 小ネタ・優秀な妹君 デスマーチ1巻第1話のエンジェルファイヤーがアルを救出した直後の小ネタです。 アリアンロッド・サガ・リプレイシリーズは有限会社ファーイースト・アミューズメント・リサーチの著作物です セブンスドラゴン2020 13版ユヅキ隊・PC紹介 SSに登場しているPC紹介ページ はじめての… PC達の邂逅編。 飛び越えろ! 第1章、逆サ都庁の4F~11Fへの道でのお話。アカツキ君、不幸w 導くもの、守るもの NAV3.6…ミロク君に名前をつけた時のお話。
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ゆっけが設定から考えた、オリジナルのSSです。 俺たち人助け部 名前 コメント
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SSその1 SSその2 ┗SS 2 SSその3 SSその4 SSその5
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幻想郷には、多種多様の人知を超えた領域が存在する。死者の魂が彷徨う世界―――冥界もその一つだ。 そこには、とある巨大な屋敷が在った。 永遠に咲く事無き呪われし桜<西行妖>が聳える壮麗な庭園。 それこそは転生と成仏を待つ魂の管理を閻魔王より承りし西行寺幽々子が住まう<白玉楼>――― 「―――とはいうものの、普段はそんなにやることもないのよね。ヒマだわ」 幽々子は縁側に腰掛け、傍らに控えていた少女に愚痴る。 「面白き事もなき世を面白く―――なんて簡単に言ってくれるわ。あーあ、ヒマだわ、ヒマ、ヒマ。このままじゃヒマ すぎてゆゆちゃん死んじゃう」 「…幽々子様。私はそれに対して<亡霊の貴女が死ぬわけないでしょう>と創意工夫の欠片もないツッコミを返す べきでしょうか?それとも自分の事をゆゆちゃんと呼ぶのはイタイと忠言すべきでしょうか?」 気真面目な口調で語る少女の名は魂魄妖夢(こんぱく・ようむ)。 可愛い、というよりは凛々しく整った顔立ちとさっぱりしたボブカット。身に付けた二本の刀と相成り、彼女自身が 一振りの名刀のようだ。 真っ白なシャツの上に丁寧に着こなした簡素な青緑のベストとスカートという、実直を絵に描いたような衣装を纏う 彼女こそは、西行寺家の庭師にして幽々子の忠実な護衛役――― それが人間と幽霊の間に生と死を受けた<半人半霊の剣士>魂魄妖夢。 その華麗にして苛烈なる剣技の前には、世界広しと言えども斬れぬ物などあんまりない! 「ハッタリでもいいからそこは<我に断てぬ物なし!>みたいに決めるべきだと思うけれど」 「何処の最近キャラ付けがおかしくなってきたスーパーロボット乗り親分ですか、それは」 「妖夢ったらさっきからダメ出しばっかりして。もっと主を敬いなさいよ。つーかあんた、ゼンガーさんをディス ってんじゃないわよ」 チッチッチ。妖夢は軽く指を振ってみせた。 「幽々子様…これぞ<主にダメ出しする勇気>です!」 「なっ!?」 何という事か。やっている事は主にダメ出ししているだけなのに、そこに勇気と付いただけで、まるで憎まれ役を 演じる事によって主の過ちを諌める真の忠義者を見ているかのようではないか! 「ああ、妖夢!貴女のような立派な子が私の家来だなんて誇らしいわ!」 「その通り。この忠臣・妖夢はいざ幽々子様に兇刃が迫りし時は、とっとと逃げ出す覚悟です」 「ダメじゃん!」 チッチッチ。またしても指振りである。 「これぞ<主を見捨てる勇気>也!」 「なぁっ!!??」 何という事か。やっている事は主を見捨てただけなのに、そこに勇気と付いただけで、まるでやむをやまれぬ事情 によって主を見捨てざるを得なくなり、不忠の大罪に血の涙を流す武士(もののふ)のようではないか! 「って、いくらヒマだからってこんな雑談ばかりしてどうするの」 「では歌を詠んでみてはどうです。皆様に幽々子様の風流な一面を見ていただきましょう」 「ふむ、それはいいわね。このままじゃ読者の皆様から見た私の印象は単なる漫才亡霊だもの」 メタ発言をかましつつ、幽々子は筆と短冊を手にした。 さらさらと短冊に文字を綴る姿は、実にサマになっている。伊達に千年以上も亡霊やってるわけではないのだ。 そして完成した一句を、朗々と謳い上げる。 生きていて よかった今日は カツ丼に ケーキにあんみつ 食べた嬉しさ 「―――どうかしら?自信作なんだけど」 すっげーいい笑顔の幽々子様である。その自信の根拠をどうか教えてほしい。 「思ったままを言っていいでしょうか」 「どうぞ。遠慮なく褒め称えるがいいわ」 「紙と墨と時間の無駄です」 「辛辣な!」 「これぞ<主の詠んだ歌にケチを付ける勇気>っすわ」 「なぁぁぁっ!!!???やっている事は主の詠んだ歌にケチを付けただけなのに、そこに勇気と付いただけで、 まるで敢えて厳しい批評を行う事で主の更なる成長を促す伝説の従者のよう―――って、もういいわよ」 「そうですね、ネタの天丼はやり過ぎるとクドくなりますから。ではカードゲームでもしますか?」 「いいわね。実は最近魔理沙からすごいカードを交換してもらったのよ。<こーりんのわーむ>ってカードでね。 パワーとタフネスがもう、すごい数値なの。なのにさっぱり弱い<ゴクラクチョー>と交換してやろう、だって。 十枚持ってたから全部交換してもらったわ。魔理沙ったら意外と太っ腹よねー。これからは気前のいい魔法使いと 呼んであげなきゃ」 「<欲しいものは死ぬまで借りる>が信条の、あの厚顔無恥な魔法使いといえども幽々子様の人徳には感服した ということでしょうね、うんうん」 (※妖夢さんは何もかも全て分かった上で言っております。分からない人はシャークトレードでググって下さい) さて、こんなゆるゆる萌え漫画のようなやり取りをしている二人ではあったが。 「―――楽しそうね、幽々子。私達も混ぜてくれない?」 突如響いた声。その姿を見た幽々子は、嬉しそうに微笑んだ。 「妖夢。どうやら退屈な時間も終わりそうよ」 主の言葉に、妖夢は庭園に目をやる。 そこには八雲紫と、見知らぬ怪しい四人組(レッドさん御一行)がいたのだった。 「はじめまして、外なる世界より来たる皆様―――幽々子でございまーす!」 座敷に上がった皆の前で、幽々子はサザエさんのものまねをした。 何やってんだろう、この亡霊。つーか何をやらせてるんだろう、作者。 「ほら、妖夢。貴女はお魚くわえたドラ猫の役をやりなさい。私はそれを裸足で追っかけるわ」 「全力で御断りさせていただきます」 「ケチー」 「…おい。俺らはサザエさんごっこを見物するために連れてこられたのか?」 レッドさん、額に青筋である。相手が(見た目は)少女でなければ、とっくにブン殴っている所だ。 「ごめんなさいね、ちょっとウケを取ってみたくなって―――ところで、紫」 幽々子は、ジローとコタロウに目を向けた。紫は頷く。 「ええ。<賢者イヴ>の子・望月ジロー。そしてその<弟>…望月コタロウよ」 「そう…他の二人は?」 「一緒にいたから、ついでに連れてきたの」 はあ、とヴァンプ様は溜息をつく。 「私達オマケなんですねぇ、レッドさん…」 「お前と一緒にすんじゃねーよ、ヴァンプ」 とはいっても、この疎外感はちょっと辛いものがあった。そこに。 「大丈夫だよ」 後光が射さんばかりの笑顔のコタロウであった。 「レッドさんもヴァンプさんも、ぼくの友達だもん。ぼくの関係者だから、オマケなんかじゃないよ!」 「コタロウくん…いいの?私なんかタダのおじさんで、しかも悪の将軍なのに」 「そんなの関係ないよ!ヴァンプさんは大事な友達さ!」 「コ…コタロウくん!」 「ヴァンプさん!」 ガシッ!男達の友情がそこにはあった。 「ほら、レッドさんも!」 「…アホくさ。いーよ、俺はオマケで」 「もう、レッドさんったらスネちゃって…それにしても」 コタロウは、紫と幽々子をまじまじと見つめる。 「紫ちゃんにゆゆちゃんって初めて会った気がしないね。何だかぼく、二人の事、ずっと前から知ってるみたい」 首を傾げるコタロウに、幽々子は頷く。 「そうね―――私もコタロウの事を、昔から知ってた気がするわ」 そして、彼女は笑いかけた。 「仲良くしましょうね、コタロウ」 「うん、ゆゆちゃん!」 「そうですね、ゆゆちゃん」 「何をドサクサに紛れて主をゆゆちゃんと呼んでますか、妖夢」 「これは失礼を。フレンドリーな主従関係を築こうと思いまして―――さて、私も自己紹介しておきましょうか。 マイネームイズ・ヨウム・コンパク。ナイストゥミーチュー」 「え、え…?ま、まいねーむいずこたろー…ナスとミートソース…」 「オー、ソーリィ。アイキャントスピークイングリッシュ!」 「…妖夢」 流石の幽々子も呆れたのか、妖夢を諌める。 「貴女は一体全体、どういうキャラを目指してるの」 「はあ、皆から愛されるキャラを模索してまして」 「にしても、原作からかけ離れすぎでしょうが」 「東方二次創作ではよくある事です。私がその気になれば、幽々子様が実はスカトロマニアという設定でハシさん に一発ドぎついのを書いて頂く事も可能なのですよ?大丈夫、バキスレにはウンコSSという伝統芸能があります」 「貴女、ハシさんに何てモノを書かす気なの!?てゆうか、何故ハシさんをチョイス!?」 「恐らく、先のホワイトデーで勝手に作者の名前を使われた事への報復かと」 「やめて!SS書き同士の醜い争いに私を巻き込まないで!」 「こうして憎しみの緋き風車(ムーラン・ルージュ)は廻り続けるのです…」 「やけに詩的な表現ですこと!てゆーか書くわけないでしょ、そんなモン!」 「なに、パンツの一枚でもくれてやれば、あの漢は喜んで書くに決まっています」 「自分のパンツを犠牲にしてまで主を貶めたいの!?恐ろしい子!」 「あ、ご心配なく。渡すのは幽々子様のパンツですよ?」 「鬼畜!これからは貴女の事を史上最低最悪最狂・最も卑劣なド腐れ従者と呼んでやるわ!」 「―――いい加減にしろ、コラッ!」 収集がつかなくなってきたバカ会話を、レッドさんの怒号が断ち切った。 「んな下らねー話で行数を稼いでんじゃねーよ!チラシの裏にでも書いてろ!」 まさに正論、その通りだった。 「えーと、その…ごめんなさい」 当然ながら謝るしかない。紫も呆れたように溜息をつく。 「幽々子…そういや、夕飯まだでしょ?妖夢と一緒に作ってきなさいよ。貴女が話してたら埒があかないわ」 「紫まで邪魔者扱いして…いいわよ。ゆゆちゃんは妖夢と仲良くご飯作るから」 「あ、それじゃあ私もお手伝いしましょうか?」 さっと手を挙げた、カリスマ主夫ヴァンプ様である。 「あら、いいのかしら?」 「ええ。これでも、料理はちょっとしたものなんですよ」 「では、お言葉に甘えようかしら」 「あ、じゃあぼくも手伝うよ!」 と、コタロウも立ち上がる。 「ここにいても、ぼくは難しい話は分かんないしね」 さっきまでのは凄まじく低俗な話だったけどな、とレッドさんは心の中で突っ込んだ。 ともかくヴァンプ様・妖夢・幽々子・コタロウの四人が部屋を出ていき、レッドさんとジロー、紫が残された。 「八雲殿…話していただけますか?」 しばしの沈黙を破り、ジローが口を開いた。 「何故、我々を幻想郷に?」 「―――コタロウは、本当に似てるわね。アリス・イヴに」 質問に対する答えではなかった。 「八雲殿…!」 「彼女の話をしたかったのよ。アリス・イヴの子であるあなたと―――まあ、それだけじゃないけどね」 どこかはぐらかしたように、妖怪の賢者は語る。 「…なあ。部外者の俺が言う事じゃねーけどよ。どんな奴だったんだよ、アリス・イヴってのは」 「そうね…」 少し考え、紫は答えた。 「私は<割と困ったちゃん>なんて揶揄されるけど…アリス・イヴは<とても困ったちゃん>だったわ」 「否定できませんね、それは…」 ジローは苦笑する。その脳裏には<アリス>との思い出が巡っているのかもしれない。 そして、またしても沈黙。 「―――ダメね。もっとたくさん、あの子の事を話したいと思っていたのに…どうにも、調子が出ないわ」 「…申し訳ありません」 「何を謝るのよ、望月ジロー」 「私は…貴女の友であり、我が君であるアリス・イヴを…護れなかった」 深い悔恨と慙愧の念が、ジローの整った顔立ちを歪めていた。 「―――<香港聖戦>」 紫が呟いた言葉に、レッドはぴくりと眉根を寄せた。 「香港聖戦…?それって、確か…」 「あら、あなたも知ってるのかしら?」 「ああ。当時の新聞やら週刊誌やらが散々騒ぎ立ててたからな。嫌でも耳に入ったよ」 <香港聖戦> それはおよそ10年前、香港を舞台に繰り広げられた壮絶なる戦争。 突如出現した<九龍王>と呼ばれる吸血鬼。彼は血族と共に瞬く間に香港を制圧し、人類に宣戦布告した。 対する人類とヒーロー、数多のヴァンパイア・ハンター。 そして人類に味方する<東の龍王>に率いられた吸血鬼達。 参戦した全ての存在が血で血を洗う死闘を繰り広げた、歴史上最大の闘い。 「俺はまだ学生だったから参加してねーし、週刊誌程度の知識しかねーけど、ヒーローも大勢参戦してたらしいし 裏じゃあ<ミスリル>とかいう組織も動いたって話だ…確かジロー、お前はその時に大活躍して<銀刀>なんて 呼ばれるようになったんだよな?」 「…大活躍などしてませんよ。ただ、ヤケになって暴れていただけです」 自嘲を込めて、ジローは吐き捨てた。 「…その時に、死んだのか…?」 ジローも紫も、何も答えない。それが何より雄弁な返答だった。 ゴホン、とレッドは咳払いする。 「何があったか知らねーけどよ…しょーがねーだろ。お前は精一杯やったんだろうし、その結果で、その――― アリス・イヴってのが死んじまったのは、悲しいこったろーけど、お前のせいじゃねーだろ」 レッドはいつになく、穏やかな声だった。 「だからよ、ウジウジ悩むなって。いなくなった誰かを忘れずにいるのも大事だろーけどよ、もうちょい能天気に 生きててもバチは当たらねーっての」 「―――優しいわね、サンレッド」 紫は、口元に少し笑みを浮かべていた。 「それだけの強さと優しさなら、世が世ならば立派なヒーローだったでしょうに。平和ボケした川崎市は、あなたに とってはさぞ退屈な街でしょうね?」 「…けっ。人の地元を悪く言うんじゃねー。いいんだよ、俺は川崎は川崎で気に入ってんだ」 「ふーん。それならそれでいいけれど―――ああ、そうだ。サンレッド、あなたのさっきの言葉、間違ってるわ」 「何が?」 「アリス・イヴが死んだ―――という部分よ。彼女は、死んでなんかいない」 「はあ?」 思わず、素っ頓狂な声を上げてしまう。 「いや―――そりゃ、おかしいだろ。だって…」 「正確には<賢者>は死んでも蘇るの…死して灰になろうとも、その灰からまた新たな命として生まれ変わる。 幾度となく死と転生を繰り返し、世界を旅する吸血鬼―――それが<賢者イヴ>よ」 「死んでも、また生まれる…?なら、どっかにいるのか?その<賢者イヴ>の生まれ変わりが」 「そう―――もしかしたら、あなたのすぐ傍にいるのかもよ?ねえ、サンレッド」 「八雲殿!」 それは、よほど触れてはならない事だったのだろうか。声を荒げ、ジローが立ち上がる。紫は、ただ目を伏せた。 「…ごめんなさい。少し喋りすぎたわ。サンレッド、今のは忘れて頂戴」 「忘れろっつってもな…」 確かに、レッドは既に聞いてしまった。そして、答えは明白だ。 死すれば新たな命に生まれ変わる<賢者イヴ>。 どこか謎の多い吸血鬼の兄弟、望月ジローと望月コタロウ。 生まれ変わったはずのアリス・イヴは今、何処に? アリス・イヴと親交があった西行寺幽々子と八雲紫は語る。 ―――私もコタロウの事を、昔から知ってた気がするわ。 ―――もしかしたら、あなたのすぐ傍にいるのかもよ? 「…ゴタゴタ、めんどくせー話ばっかしやがって。そんなん俺に話した所でどーもしねーよ」 レッドは頬杖をつき、答えた。 「賢者がどーだのこーだの、俺にゃ興味ねーな…今まで通りにやるだけだ。今まで通り、コタロウはただのバカ なガキ。俺にとっちゃ、それだけだ―――ヒーローは、子供の味方だからな」 「レッド…」 「あいつは、お前の弟の望月コタロウ。それでいいんだろ?」 「ええ…そうです」 「コタロウは、私の弟ですよ。それ以外の何者でもない」 「だよなあ」 レッドは、からからと笑った。 「大体がな、あのバカが<賢者>なんて、悪い冗談にも程があるっての!あいつが賢者なら世界は賢者しか いねーっての!そう思うだろ、なあ」 「―――そう」 果たして何を思ったのか、幻想郷の母たる妖怪は薄く微笑む。 「サンレッド…あなた、意外と大物なのかもね」 「何だよ。急に褒めてんじゃねーよ」 「いえ、私もそう思いますよ」 ジローも続いた。 「正直、最初にあなたを見た時はなんだこのチンピラのヒモは、と思いましたが、謝ります」 「お前って結構ひでーな、おい…」 しかし反論できないのも事実である。レッドは憮然とするしかなかった。 「あれ?何だか三人とも、結構仲良くなってませんか?」 そこにヴァンプ様が、美味しそうな香りの立ち上る鍋を両手にやってきた。後ろには皿や茶碗を持つコタロウ達 の姿も見える。 「ねえねえ、レッドさん。どんな話してたんですか?」 「うっせーなー。何でもねーよ、何でも」 レッドさんはしっしっ、と鬱陶しそうにあしらいつつ、声を張り上げた。 「ほら、それよりメシだメシ!熱い内に食おうぜ!」 「そうよそうよ。私、もう我慢できないわ!」 「幽々子様。つまみ食いしまくってた貴女が言うセリフではありません」 「ああん、妖夢ったら、黙ってれば分からない事を言わないで。しょうがないじゃない、ヴァンプさんのお料理、 とっても×10美味しいんだもの!」 「うん!ヴァンプさんの料理は日本一だよ!」 「いやだ、そんなに褒めないでよー。照れるじゃない(ぽっ)」 「ぽっ、じゃねーよ。悪の将軍としての自覚を持てよ、全く…」 さて、それはともかく。 『いただきます!』 少女食事中… 英雄食事中… 兄弟食事中… 将軍食事中… 「あー、美味しかった。ヴァンプさんは料理の天才ね」 大きくなったお腹を叩き、幽々子は満足げに息をつく。 「うふふ、意地悪な妖夢はお払い箱にして、ヴァンプさんを雇おうかしら?」 「どうぞどうぞ。私は退職金を元手に今流行りの自分探しの旅に出ますので」 「え…ちょ、ちょっとやめてよ。冗談にそんな冗談で返すのは…」 「いえ、本心ですから。どうです、ヴァンプさん。考えてみませんか?」 「え?うーん…でも私、やっぱり世界征服の野望は捨てられないから…ごめんなさい」 「そうですか、残念です…」 本当に残念そうな妖夢さんであった。 「なんて恐ろしい子…まあ妖夢とは後でじっくり話し合うとして、紫。貴女もう<あれ>は見せたの?」 「まだよ。皆が揃ってからと思ってね」 「<あれ>?何だよ、それ」 「―――これよ」 紫が宙に手を翳すと、スキマが出現した。その中に腕を突っ込み、引き抜く。 取り出されたのは縦・横ともに三尺三寸ほどの大きな箱。 「賢者イヴが、私達に預けていったものよ。秘蔵の一品だって…遺品になってしまったけど、ね」 「…………」 「数百年後―――具体的には、今年の今頃に一緒に開けようと言っていたわ。そのくらいが、いい塩梅だってさ」 「どういうこった?」 「さあ?賢者の考える事は計り知れないわ。とにかく彼女は、そう言い残していった―――彼女がもういない今と なっては、私や幽々子だけで開けてもよかったんだけど、イヴの身内である貴方達も呼ぶのが筋と思ったからね ―――まあ、余分なのも二人ほど来ちゃったけれど」 ちらり、とレッドさんとヴァンプ様を見やる。 「余分で悪かったな、コラ」 「まあまあ、レッドさん―――じゃあ、開けてみませんか?ジローさんにコタロウくんもいるわけですし」 「そうですね…私も、是非見せてほしい」 「うん、開けてみようよ!何が入ってるのかなー?すっごい宝物だったりして!」 ワクワクする皆の視線を受けながら、紫が箱の蓋をこじ開けていく。 「…あら?」 「どうしたの、紫」 「いえ…これを見て」 一同は箱の中を覗き込む。そこには一回り小さな箱と、その上にそっと置かれた手紙があった。 手紙には<アリス・イヴが今、その場にいなかったら読んでください>と走り書きがされてある。 「…イヴ」 小さくその名を呟き、紫は手紙を開いた。 <紫ちゃん、それにゆゆちゃんへ。この手紙を読んでいるという事はアリス・イヴはもういなくなったという事なの でしょう。でも寂しがらないでください。ぼくは皆の心の中で生き続けているからね> 「自分で言うか、あの子は…」 「全く、イヴらしいわ」 皮肉っぽい口調だったが、紫と幽々子の表情には暖かさと懐かしさがある。 しかし手紙を読み進めるうちに、怪訝な顔になっていく。 <さて、ぼくの秘蔵の品なんですが、ぼくがいない以上は新しい所有者を決めるべきでしょう。そこで、いい事を 思い付きました。名づけて秘宝争奪幻想郷トーナメントです> 「…はあ?」 「ひほーそーだつとーなめんと?」 <読んで字の如く、この箱の中身が欲しいという参加者を集い、一大トーナメントを開いて大騒ぎです> <もしもよろしければ紫ちゃん達でその辺の段取りをやっていただければ嬉しいです。ではでは> 「おい…本当に、そんなアホな事が書いてんのか?」 手紙をひったくるようにして受け取り、目を通してみるレッドさん。ジローもそれを覗き込む。 「書いてあるな…」 「書いてますね…確かに、彼女の文字です」 「…なんだってこんな事を」 「多分…面白そうだと思って、その気持ちを抑えきれなかったのではないでしょうか」 あんな風に、とジローはコタロウを見やる。 「トーナメント…すっごーい!早く見たい、トーナメント!ねえねえ紫ちゃん、やろうよトーナメント!」 手足をバタバタさせて、コタロウは紫のドレスの裾を掴んで満面の笑顔でせがんでいる。 その有様を見て、レッドさんは大げさに肩を落とす。 「…コタロウ」 紫はコタロウに目を落とし、静かに問う。 「あなた、この企画が面白いと思う?」 「うん。トーナメント、いいじゃん!バトル物の定番だよ、定番!もちろんレッドさんと兄者も出るよね!ねっ」 無邪気な瞳に見つめられ、レッドさんとジローは嘆息した。 「…俺達も出場しなきゃなんねーんだろーな、話の流れ的に」 「まあ、そうでしょうね…しかし、これはいわば彼女の形見をかけた闘いです」 ジローは居住いを直し、答える。 「彼女は幻想郷の住人のためにと遺したのかもしれませんが…この場に居合わせたからには、欲しくなりました」 「お前、意外と我儘だよなー…」 「ええ、よく言われます」 「ったくよー、おかしな事になってきやがったな」 そうは言いつつ、レッドは自分が少なからず高揚している事を自覚していた。 彼は、予感している。 普段は持て余し気味の巨大すぎる力。このトーナメントは、それを遺憾なく発揮できるだろう――― そんな確信があった。バキボキっと、拳を鳴らす。 「しゃーねーな。それじゃあちょっくら、サクっと優勝してやるか!」 「あ…あのー…」 やる気になってるレッドさんとジローを見て、ヴァンプ様はおどおどしつつ自分の顔を指差す。 「も…もしかして、私も?」 「お前はやめとけ、ヴァンプ」 「そ、そうですよねー!じゃあ私は皆さんの応援に回るという事で、ははは」 素直であった。何度も言うけど、この人は世界征服を企む悪の将軍だからね! 「幽々子…貴女はどうする?」 「どうするもこうするもないわよ」 幽々子は、紫に向けてウインクしてみせた。 「紫だって、こういうバカ騒ぎは好みでしょう?いいわよ、私達も手伝って盛り上げてあげる」 「<達>の中に、私も入っているんでしょうか?」 「勿論。まずは、そうね…新聞記者の射命丸文(しゃめいまる・あや)にこの話を伝えて頂戴。それであの子なら 喜び勇んで記事にして、参加者を集ってくれるでしょう。あとは会場の設営だけど、河童達にでも頼んで―――」 はあ、と妖夢は肩を竦めるが、彼女は言動がどうあれ忠実な従者である。 主に逆らうつもりなど、毛頭ない。 誰からも反対意見が出ないのを確認し、紫は嘯く。 「いいでしょう―――アリス・イヴ。貴女の我儘、友達のよしみで聞いてあげる」 それは即ち、宣言だった。 「幻想郷最大トーナメント、開催よ。優勝賞品は賢者が遺せし秘宝―――」 そして。 「この八雲紫も、出場させてもらうわ。元々は、私が預かった品ですからね―――」
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~ミッドチルダ中央区画湾岸地区・住宅地某所~ 「ヴァンプ様、食器はここでいいですか?」 「あぁそこで大丈夫だよ1号。よく使う食器は目線の位置に、コップ類は上の方、大皿とかの重いのは下の方に入れといてね。あ、ガラスのコップ類は滑り止め代わりに下にコースターを置いとくんだよ。」 「ヴァンプ様ぁ~冷蔵庫ここで良いですかぁ~?」 「タイザ君、冷蔵庫はそこじゃなくてこっちだよ。置く時は壁との間に少し隙間を開けてね。」 「あい。」 「ほぉら高い高いでちゅよぉ~これで高い所にも手が届きまちゅねぇ~(笑)」 「ちょ、やめてよ!?僕飛べるんだからさぁ!!」 「真面目にやろうよカーメンマン…ιウサちゃんも嫌がってるんだしさぁ。」 「何、もしかしてお前もやりたいのかよネコ?だったら俺がやってやるよ。」 「ほらほら四人とも遊ばないの、もうすぐ2号とPちゃんが買い出しから戻ってくる筈だから…そうしたらお昼にするからね。」 川崎からミッドチルダに現れたヴァンプ達は『フロシャイムアジトミッドチルダ支部(仮)』の運営に向け着々と準備(荷ほどき)を進めている。そして彼らは次元征服の先駆けとしてある一大作戦を決行しようとしていた。 「それにしても良い物件が見つかりましたねぇ~ヴァンプ様。」 「うん、ホントに良かったよぉ~何でも元々学生寮だったらしいんだけど老朽化で取り壊す予定だったみたいでね、そこをウチ(フロシャイム本部)が安く借りたんだって。 おまけに日本出身の人が設計したらしいから日本風の家屋で落ち着いた雰囲気だしね。」 「あぁ~それで何かあっち(川崎支部)と似た感じなんですね。」 「そう、そこが気に入ってるの私。交通の便はあまり良いとは言えないけど海が近くて見晴らしも良いし、空気もきれいだから飛べる子にも良いと思ってね。それになんと言っても町の雰囲気が良いと思うの。」 「確かに治安とかも良さそうですもんね。少し歩いた所に警察署みたいなのもありますし。」 彼等は荷物の整理をしながら悪の組織とは到底思えぬ程の平和な会話をしていた…そしてそれも休憩に差し掛かろうとしていた。 「只今戻りましたぁ~」 「℃¥$¢£%◇◎§@*」 「あ、帰ってきたみたいだね…それじゃ皆~今やってる作業が終わったらお昼にするからねぇ~。そしたら午後からはちょっと出かけるよぉ~!!」 ヴァンプは2号達が買い出しから帰ってきた事に気付き皆に声をかける。そして周囲から『は~い!!』という元気な返事が返ってきた時、近くにいた1号がふと思った事を尋ねる。 「あれ?ヴァンプ様、まだ結構荷物が残ってますけど良いんですか?」 「うん良いの。荷ほどきは後でも出来るけど、午後にやる事は大事な事だからね…よし!」 1号の問いに答えながらヴァンプは割烹着の紐を結びキッチンへ向かい、午後からの内容をを口にする。 「午後から頑張らないと…『ご近所への挨拶回り』!!」 フロシャイムミッドチルダ支部(仮)が行う最初の作戦。それは新参である自分達と地元の住人との円滑なコミュニケーションを進め、相互理解を深める第一歩『ご近所への挨拶回り』である… 『天体戦士リリカルサンレッド』この物語は川崎から現れた怪人たちがミッドチルダにて繰り広げる善と悪の壮絶なる闘いの物語である――― FIGHT.01『邂逅、法の守護者と悪の組織!!』 ~ミッドチルダ中央区画湾岸地区・古代遺失物管理部「機動六課」本部隊舎~ 雲一つ無い青空の下、機動六課本部隊舎では多くの人間が机やその他事務用品等の様々な機材を隊舎に運び入れており、隊の始動に向けて着々と準備を進めていた。そしてその隊舎の前にある広い敷地に二人の女性が佇んでいる… 「なんやこーして隊舎をみてると、いよいよやなぁって気になるなぁ…」 「そうですねはやてちゃん…いえ、八神部隊長!」 陸士の制服の上から厚手のコートを肩にかけた短い茶髪の華奢な女性、六課部隊長の八神はやてと同じく陸士の制服の上から白衣に身を包んだ金髪でショートボブの女性、医務官のシャマルは六課隊舎と向かい合う様な形で談笑をしている。 その暖かな雰囲気は姉妹の様であり母子の様でもあったが、そこから感じられる親愛の「絆」と言うものには何ら変わりは無かった。 「いい場所があって良かったですねぇ。」 「うん、交通の便がちょう良くないけどヘリの出入りしやすいし機動六課には丁度ええ隊舎や。」 「それに…なんとなく海鳴に雰囲気が似てますしね。」 「あはは、そう言えばそうやな♪」 海風に髪やコートの裾をたなびかせながら、二人はまるで新学期の始まりを楽しみにしている子どもの様に話に花を咲かせる。だがそんな中、はやての通信端末に連絡が入る。 『失礼します。八神部隊長、今お時間宜しいでしょうか?』 はやてが端末を開くと、それは栗色の長髪に幼い顔立ちで眼鏡をかけたロングアーチスタッフの女性、シャーリーことシャリオ・フィニーノからの通信であった。 だがその表情はどこかぎこちなく、普段の彼女の明るさと比べると暗い感じがする。 「あぁシャーリー、今大丈夫やけどどないしたん?何かちょい元気が無さそうやけど。」 『今玄関に団体の方々が見えていらっしゃるのですがその、どの様に対応をしたら良いのか困っておりまして…』 はやては六課がまだ始動前と言うこともあり、いつものフランクな態度になるもそれに対するシャーリーは少し困ったような表情を浮かべ、苦笑するばかりであった。 「団体の来客?特に今日はそんな予定は無かった筈やけど…まぁえぇ、私は今日はまだ暇やし玄関に行けば良いんやね?念の為応接室の用意をしといてな。」 そう言うとはやては端末を切りシャマルを伴って玄関へと向かい、件の団体に対する予想を立てながら歩き始める。 (シャーリーは若くても優秀なロングアーチのスタッフや。そのシャーリーが応対に困るほどの相手…管理局と対立をしている団体かもしれへん。 確かにここに六課が建つ時も少なからず近隣住民からの反対があった。以前理解を求めるための説明会を開いたけど納得出来ていない人もいた。だからそんな人達が抗議に来てもおかしくは無い…でも、だからこそ今ここで理解を深めて貰う為にもきっちり話をせなあかん。) はやては気持ちを引き締め玄関へと足を進める。そしてその先にはある意味予想を上回る一団がいた。 「あ、どうも~川崎から参りました『悪の組織フロシャイムミッドチルダ支部』将軍のヴァンプです。あのこれ…お口に合えば良いんですがウチの組織で作っている『フロシャイムソーセージ』です。つまらない物ですがどうぞ~」 引き締まった肉体に特撮物に出てきそうな格好の集団、リーダーらしき小柄な男性?の側には抱き上げたくなる様なぬいぐるみ… 更に見た目とは裏腹に目の前にいる集団からは敵意や殺意等の攻撃的な気配は感じられず、逆にこちらが和んでしまいそうな程ほのぼのとした空気を纏っている。 (確かにこれは応対に困るわな…) 「初めまして、古代遺失物管理部機動六課部隊長、八神はやてです。」 はやては見た目と空気のギャップに辟易気味になりながらも応対を始めた。 「すいません、荷物が多くて…ちょい落ち着かないかもしれへんけどまぁくつろいで下さい。」 「いえいえ良いんですよ、こちらが押し掛けて来たんですし…それじゃあお言葉に甘えて失礼しますね。」 簡単な自己紹介を行った後、はやては先程シャーリーに手配を頼んだ応接室にヴァンプ達を招き入れていた。本来なら突然来訪した者にする事では無いが彼らが悪の組織と自ら名乗っている以上、素性や目的等の話を聞く必要があると判断したのだ。 「お茶とお菓子をどうぞですぅ~。」 「おい見ろよカーメンマン、リ○ちゃん人形が浮いてるぜ。」 「ばーかよく見ろ、あの体型のバランスはバ○ビーだろうが。」 「違います!リィンはリ○ちゃんでもバ○ビーでもGIジ○ーでもありません!!」 会談は銀の長髪を持つ小さなユニゾンデバイス『リィンフォース・ツヴァイ』が茶を用意し、カーメン達のからかいから始まった。 「そう言えばヴァンプさん達は川崎…つまり地球から来たんやねぇ~、私らと一緒や!」 「えぇ、はやてさんもですか!?もしかして地球の大阪からとか…?」 「いやぁ私はこんなしゃべり方やけどちゃいます。六課の中では私と私の家族、それと両分隊長が地球…日本の海鳴からですねん。」 はやてから海鳴という地名が出た瞬間、ヴァンプ達の間に衝撃が走る。その表情は伺えないがじんわりと汗をかき、警戒というよりは怯えの色が強く場の雰囲気は静寂につつまれ約一名の煎餅を食べる音だけが響いていた… 「(ねぇねぇ、海鳴ってなんだったっけ?)」 「(バカ、覚えてねぇのかよウサッ!?先月の春のフロシャイム便り『怪人が行ったら凄く危険な場所ベスト3』に北海道と同一首位で載ってただろ!!)」 「(そうだぞウサ、しかも海鳴は十数年近く一位にいてなぁ…吸血鬼やメカメイド、超能力者や退魔師に妖狐がいるとかでウチの支部がないんだよ!!俺だってあそこの地域限定のカップ麺は我慢してるんだ…)」 「(ちょっと皆、人の地元の悪口を言うのは良くないよ。)」 「タ、タイザさん…家じゃないんですからあんまりボロボロとこぼしたらだめですよι」 「ヨーユゥ、ヨーユゥ♪」 「う~ん、私も10年以上海鳴にはいたけどその話は聞いたこと無いわぁ~」 ウサコッツ達は小声で話、1号がタイザに話しかける事で場を取り繕うとしたが聞こえていたらしく場に気まずい空気が流れる。 「ね、ねぇヴァンプ様!僕飽きちゃったからねこ君達と遊びに行っても良い?」 「そうなのウサコッツ?でも帰るのがいつになるかわからないし…う~んどうしようかなぁ。」 「ごめんな~退屈させてもうて…そや、もし良ければ隊舎の中を見てかへん?」 場の空気を変えようとしたウサコッツに対してはやては隊舎の散策を提案する。フロシャイムの面々に対して初対面ながらもつい仲間内の様にフランクな感じになってしまうが、決して警戒を解いたわけではない。 ここでバラバラに動かれるよりはまだ自分の目が届く、見られても困る物が未だ無い六課の中にいてもらった方が良いと考えたのだ。 「えぇ、良いんですか!?」 「勿論ですよ。リィン、案内をお願いな。」 「はいですぅ!!」 「う~んそれじゃあお願いしましょうか…ウサコッツ、デビルねこ君、Pちゃん、ちゃんとリィンちゃんの言う事を聞くんだよ。初めての場所だからってはしゃいで周りの人に迷惑をかけないようにね。」 「「「はぁ~い(∇≒≪♪♭♯‰√)!!」」」 「それじゃあ行くですよぉ~」 リィンの号令を合図にアニマルソルジャーの皆はトテトテと集まり、はやては先程のやりとりを見てまるで親子みたいやな…と思い苦笑する。 だがその時、先程から顔色の優れなかったデビルねこが突然倒れる。最初は只転んだだけかと思ったが息が荒く、体も小刻みに震えているのでどうやら違うらしい。 「デビルねこ君まさか…」 「だ、大丈夫ですかぁっ!?」 「なんや、どないしたんや!!」 「はぁ、はぁ…ご、ごめんなさいヴァンプ様。今日ゴタゴタしてたから…インシュリンを射ち忘れちゃって…」 デビルねこはいつもよりも耳をピクピクさせ、目に涙を浮かべている。 「しっかりしてデビルねこ君!!だ、誰か糖分を…飴よりも吸収の良いジュースとかを!」 「タイザさん、甘いお菓子か何か持って無いんですか!?」 「食ベタ、食ベタ!!」 「糖尿!?こんなかわいらしい子が糖尿なんか!!シャマル~ちょいと来てぇっ!!」 この後、はやて達は話をする所ではなくなったのは言うまでもない… 『天体戦士リリカルサンレッド』この物語は川崎から現れた怪人たちがミッドチルダにて繰り広げる善と悪の壮絶なる闘いの物語である――― 続く ~おまけ~ 『ホントは凄いぞ!!フロシャイム怪人図鑑(ミッド編)』 ヴァンプ…本作の主人公でありカリスマ主夫な現ミッドチルダ支部(仮)の将軍。ミッドに来た感想は「地球と似た雰囲気で安心できる」との事。 出張目的は『異世界でのアジト運営に向けてのデータ収集』であるがヴァンプ自身はご近所付き合いや自治会への積極的な参加を第一に、後は買い物ルートや新たな献立、新しい怪人のスカウト等ついでに打倒サンレッドに繋がる何かがあれば良いと思っている。 戦闘員1号&2号…フロシャイムの戦闘員。わかりやすい違いは額の数字と声、別に技の1号力の2号と言う訳ではない。ミッドでの抱負は「新しいメンズブランドの開拓」 ウサコッツ…ウサギのぬいぐるみ型怪人。かよ子(レッドの彼女)と当分会えなくなる為少しブルーだったが見知らぬ土地に来て興奮気味、ミッドでの抱負は「今度こそ自分が『可愛い』ではなく『恐ろしい』怪人である事を証明する」必殺技はデーモンクロー デビルねこ…ネコのぬいぐるみ型怪人。糖尿は治りかけていたが油断してしまい再発、ミッドでの抱負は「今度こそ糖尿を完治させる」必殺技は頭突き Pちゃん改…トリのぬいぐるみ型怪人。現在はデバイスの音声機能を自身に組み込もうか思案中、ミッドでの抱負は「改造に使えそうな技術を探す」必殺技は破壊光線とアトミックミサイル タイザ…オオカミ型怪人。ミッドに来た感想は「楽しい」との事、目標も必殺技もとくに無し メダリオ…ヒト型怪人。ミッドに来た感想は「こっちのカップ麺は無添加で驚いた」との事、ミッドでの抱負は「ミッド製カップ麺の全ラインナップ制覇」必殺技はマシンガンシャワーにメダリオキャノン、ツインデスアタック(カーメンマンとの合体技) カーメンマン…ミイラ型怪人。愛車のビッツが法律上の問題でミッドに持ち込めなかった為気落ちしている。ミッドでの抱負は「ビッツをミッド規格に改造する為にバイトをする」必殺技は太古の呪いにヴァジェットウィップ、ツインデスアタック(メダリオとの合体技) 前へ 目次へ 次へ
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=現在整理中です= というか分類はあんまり参考になりません 瀬戸の花嫁 非エロ・ほのぼの系SS 夫婦の昼食準備。 ほのぼのエロ澄さんSS NS-001 NS-002 NS-003 NS-004 NS-011 NS-012 NS-021 NS-022 燦×永澄・1 燦×永澄・2 NS-031 NS-032 NS-041 燦・ルナ会話 NS-051 NS-052 NL-053 NL-054 燦ルナ明乃&永澄・1 燦ルナ明乃&永澄・2 燦ルナ明乃&永澄・3 (ストーリーは燦→ルナ→会話→燦ルナ明乃) 淫らでエッチなアイドルはお好きですか? 永澄受けSS 黒澄さんSS 藤代SS 夜のプールで(藤代×巡)・1 夜のプールで(藤代×巡)・2 夜のプールで(藤代×巡)・3 その他
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